東京高等裁判所 昭和60年(ネ)3111号 判決 1986年5月15日
控訴人
松下保久
被控訴人
日本電気株式会社
右代表者代表取締役
関本忠弘
右訴訟代理人弁護士
西迪雄
富田美栄子
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実
第一 当事者の求めた裁判
一 控訴人
原判決を取り消す。
被控訴人の昭和六〇年六月二八日に開催された第一四七期定時株主総会における第一四七期利益処分案を承認し、並びに定款第二条を変更し、並びに瀬古由郎、海東幸男、伊部恭之助、伊東祐弥、秋元和好、松笠功、福田厚、高原磐根、中尾英夫、柳井章、清田元、中沼尚及び金子尚志を取締役に、筒井栄次郎、新井正明及び小池明を監査役にそれぞれ選任し、並びに退任取締役及び退任監査役に退職慰労金を贈呈し、その金額等の決定は、退任取締役については取締役会に、退任監査役については監査役の協議にそれぞれ一任する旨の決議を取り消す。
訴訟費用は第一、第二審とも被控訴人の負担とする。
二 被控訴人
控訴棄却。
第二 当事者の主張
当事者の主張は、次のとおり訂正、付加するほかは、原判決事実摘示中「第二 当事者の主張」欄に記載のとおりであるから、これを引用する。
一 原判決四丁表三、四行目の「昭和五〇年」とあるのを「昭和六〇年」と訂正する。
二 控訴人の当審における主張
1 商法二三二条ノ二第一項にいう「六月前」の期間計算は、同法二三二条第一項等の場合と異なり、株式を取得した当日を算入すべきものである。
2 控訴人は、本件株主提案権の行使にあたつて提案理由を説明しているほか、次の事実がある。
(一) 被控訴人の代表取締役会長は、昭和五九年六月二九日開催の第一四六期定時株主総会において終始椅子に腰をかけて議長を務めた。
(二) 右総会で控訴人が質問を行い、まだ質問が残つているのに議長から「あと一問だけ」(許可する)と質問を制限された。
三 控訴人の主張に対する被控訴人の答弁
1 控訴人の1の主張は争う。
2 同2の主張は争う。同主張は前年度の株主総会に関するもので、本件提案権の適否ないし本件株主総会の決議の効力とは無関係である。
第三 証拠<省略>
理由
一当裁判所も、控訴人の本訴請求は理由がないものと判断する。その理由は、次のとおり付加するほかは原判決理由説示と同一であるから、これを引用する。
1 控訴人は、商法二三二条ノ二第一項に定める「六月」の計算にあたつては、株式を取得した当日を算入すべきであると主張するが、期間計算にあたつては株式を取得した当日すなわち初日を算入すべきでないことは商法一条、民法一四〇条に定めるところであり、商法二三二条ノ二の場合これと異別に解すべき理由は何ら存在しないから、控訴人の右主張は採用できない。
2 更に、控訴人は本件株主提案権の行使にあたつて提案理由を説明しているほか、昭和五九年六月二九日開催の定時株主総会においてその挙げるような事由が存在した旨主張するが、仮にそれらが事実であつたとしても、控訴人が商法二三二条ノ二第一項に定める持株要件を充足することにならないし、また本件決議自体の取消事由にはならないものというべきである。
二よつて、控訴人の本訴請求を棄却した原判決は相当であつて、本件控訴は理由がないので、これを棄却することとし、控訴費用の負担につき民訴法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官岡垣 學 裁判官小川昭二郎 裁判官鈴木經夫)